金子稚子の「とんぼとかめ」日記

『ACP(アドバンス・ケア・プランニング)』『人生会議』を中心に、死や死別について考えることを記しています。

「無職男性ドラマ」と人生会議

またもドラマ話題で恐縮なんですが。

こんな記事が目に留まりました。

headlines.yahoo.co.jp

「医療ドラマだらけ」の裏では、「無職ドラマだらけ」が進んでいたとは!

この中のドラマの何一つチェックできていない私はだめだなあと思いつつも、記事の冒頭に取り上げられている『コタキ兄弟と四苦八苦』(テレビ東京、金曜深夜0:12〜)だけは、一度だけ、しかも最後の数分だけを観たことがありました。

「レンタルおやじ」の依頼者である“余命わずかな女性”の回を……。たまたまテレビをつけたらやっており、物語の流れもわからず最後まで観てしまっただけなのですが……。

 

さておき、なぜここまで無職の男性がテレビドラマの「攻めた枠」で主役になっているのか。とても興味深く思いました。

少し前に、以下の記事になるほど〜と思っていたので。

gendai.ismedia.jp

終活ならぬ、いわゆる婚活をテーマにした記事です。

この中で特に気になった箇所は、

自分の感情がわからないと、他人の感情もわからない。自分の感情を大切にしないと、他人の感情も大切にできない。感情を言語化できないと、他人と理解・共感しあい、深いつながりを築くことも難しい。

ここに、そうなんだよ!と共感したからです。

思わず、ここから(恋愛とか婚活の段階から)始まっていたのか!と思いました。

 

筆者は、その前にこんな分析もしています。

彼ら(金子注:男性)は(自分の得意分野などの)知識は語れるが、自分の感情は語れない。それは「感情よりも理性を優先すべき」と刷り込まれて、己の感情を深く見つめた経験が少ないからじゃないか。

 

感情を語れない……。これって、人生会議においては、正直、結構マイナスに働きます。死について、いくら知識をいっぱいに積み重ねても、それだけでは解を見出せないからです。むしろ知識だけを語っても、聞かされても、本当に共有したい・すべき本質には届かず隔靴掻痒状態になってしまうことも少なくありません。

それに、死に近くなればなるほど、自分がどれほど「知らなかった」「わからない」かが身に迫ってくるでしょう。死は、学ぶことのできない、まったくの未知の体験ですから。

私の場合は、自分自身の死ではなく、大切な人の死でしたが、それでも私たち夫婦の場合は、最初はその「わからなさ」に混乱し、苦しむことになりました。

 

そんな時、大切なのは感情です。

自分の「今の感情」をつかむこと。

知らなかったことだらけ、わからないことだらけの中で、今確実にはっきりしているのは自分の感情だけです。これを言葉にする。言葉にできなくても、自分自身が「わかってもらえた」と心底感じられる相手が目の前にいる。たったこれだけのことなのですが、死を前にしては本当に大切なことだと、経験者として強く主張したいと思います。

 

人生会議においては、特に医療現場でそれが進められる時には、医療の選択(延命治療の要・不要とか、栄養補給の方法とか)の方向に話が進みやすいのではないかと思われます。そこには知識や経験が豊富な専門家がたくさんいて、ある意味、委ねられる。

 でも、「意思の決定」は、思う以上に困難です。知識を積み重ね(もちろん知識を積み重ねることは否定しません)、理性的に判断できたとしても、死というまったく未知のものを前にしては、感情を理性で押し込めることは相当な苦痛をともなうでしょう。というか、たぶんできない。

 

必要なのは、自分の感情に気がつくこと。最初はそこからです。快か不快か、好きか嫌いか、そんな小さなことから言葉にしてみる。

人生会議を行う前に、そんなトレーニングを始めてみることをお勧めします。

 

テレビドラマの「攻めた枠」が、無職男性だらけになったのは、とってもいい傾向だと思いました。

どこへ勤めているとか、どんな職業だとか、そんなスペックが無い人たちに光を当てたい空気が生まれているのかもしれません。

言ってしまえば、そんなスペックは、死を前にした時には何の意味もありません。自分の支えになるのは、スペックの裏にあることのはず。それが周囲と共有できることが大切です(ちなみ亡夫は「流通ジャーナリストとして死ぬまで生きる」ことを大切にしました。だから最後まで病気を公表しませんでしたし、通夜葬儀、墓まで自分で手配した次第です)

素直に感情を伝え合える関係があるだけで、終活はほとんど完了したと言えると個人的には思っています。もちろんその関係は、家族だけに限りませんが……(相続や延命等、死後にもめそうな内容については、それこそ知識とハウツーでカバーできます。トラブルが起こっても、その関係があると無いとでは、その後が違うと言えるでしょう)

 

今回目に留まった記事の筆者も「わかこ」さんでした(笑)。意識していたわけではないですが、わかこ付いていますね(笑)。